かしこい犬
おすわり→お手→おかわり→伏せ→待て→よし。
飼っている犬にこの手順でエサをあげていたのだけど、
今日、僕がエサを見せた瞬間に犬が「伏せ」の態勢を取った。
おすわり→お手→おかわり、の手順を撤廃し、
伏せ→待て→よし。という簡略化されたプログラムに改編しようとしているらしい。
そんな勝手なルール変更を認めるわけにもいかないので
僕はおすわりからやり直しさせる。
犬はしぶしぶ元の手順を消化してエサにありつく。
だがその目は諦めていない。
きっと明日もエサを見せた瞬間この犬は「伏せ」の態勢を取るだろう。
そんな目をしていた。
炎を操る能力
潰してはいけないって分かってるんだけどついつい潰してしまうなぁ、と思いつつライターの火であぶった針を右腕にできた水ぶくれに突き刺す。
あいた穴から膿の混じった黄色く濁った水がゆるゆるとあふれてくるのをティッシュで拭き取りながら気を失いそうなほどの目眩を感じる。
もう誰とも戦いたくはないと願う彼は明日も誰かと戦う。
ごっこ
客がステージに立ち、客が客を観て熱狂。
客しか存在しない箱。
ごっこ遊び。
若者の現実離れ
感情を1ミリでも自分の外側に出すと寿命が縮むような世界観で生きている人たちの死んだ目をとらえて離すことができなくなっているくらいに夢中にさせている対象はわざとらしいくらいオーバーリアクションに感情を噴出させて暴れまわる個性豊かなキャラクターたち。
能面がへばりついたような顔に空いた穴から低い笛のような音が漏れてきて耳をすましてよく聴くと「わかるぅ、わかるぅ」というようなことを言っているんだということがかろうじて判断できる。
お前らには一生何も分からない。
ノットヒーロー
自分がされて嫌なことを人にするのはどうだろう。
自殺は家族や友人に対する、いじめじゃないのかね。