そういう夢

テニス部のミーティング中にパンを食っていたら、

先輩に「監督が話してる時にパン食うな!」と叱られる。

 

先輩は普通に注意してくれたんだと思うけど、

僕は前日その先輩に試合で勝ってしまっていた。

 

周りからは

負けた後輩に当たり散らしてるめちゃくちゃかっこ悪い先輩、

みたいな構図に見えるんじゃないか。

このタイミングで僕を叱るのはまずいだろ先輩。

そんなことを思ってやきもきしていた。

 

他の部員の顔を見渡すと、

やはりみんなにやにやと笑いながら僕らを見ている。

ああ駄目だ。完全にそういう構図としてとらえられている。

 

先輩は完全にそういう構図としてとらえられていることに気づかず、

ちゃんとやれよお前、みたいなことを言っている。

 

僕は完全にそういう構図としてとらえられていることに気づきつつも、

はい、すいません、気をつけます、みたいなことを言っている。

ものうい、かわうそ

夕食を一通り食べ終わったあとに、鍋の中に昨日の残りもののスープがあるのを見つけた。

傷む前に片付けてしまおうと、食器にそのスープを注いですすっていると、弟がぎょっとしたような顔をして、

「それ、さっき酢の物入ってた器?」と僕に聞く。

僕は答えずに、弟のほうを見ながら黙ってスープをすする。

「酢の物が入ってたやつやんな?」

弟は同じ質問を繰り返す。

僕は黙ってスープをすすり続ける。

口の中に広がるコンソメと酢の香り。スープの底にはタコときゅうりが沈んでいる。

決意

僕がよく言うジョークの一つに、

「母は僕が生まれる前に死んじゃったんです」というのがある。

これが悲しいくらいに伝わらない。

「いや生きてるでしょ」とか「嘘じゃん」的な間違ったツッコミを入れられる。

もしくは

「そうなんだ…」とか「あっ、すいません…」的な間違ったリアクションを取られる。

でも折れない。

このジョークはこれからも言い続けていく。

理想形

誰かに見られたら褒められそうなことを誰かに見られた瞬間、全く無価値なものに変わる。

栗や松茸を届けていたことを兵十に気づかれること無くただ撃ち殺されるごん狐がベストエンディングだと僕は思う。

グッドエンディングではないけど、ベストエンディング。

特に無し

白衣を着た横分けのオッサンが

ひょうたんのような形をした模型を指差しながら

「研究の結果、我々の住む地球は球体ではなく、実はこのようなくびれた形状だったということが分かりました」という発表。

メモに筆を走らせる記者たち。シャッターを切るカメラマンたち。

そのテレビ中継を観ている視聴者たち。

みんな、

どうでもいいなぁ。と思っていた。

白衣のオッサンも、

どうでもいいなぁ。と思っていた。

白衣のオッサンは、

早く帰ってジグソーパズルの続きやりたいなぁ。と思っていた。