ものうい、かわうそ

夕食を一通り食べ終わったあとに、鍋の中に昨日の残りもののスープがあるのを見つけた。

傷む前に片付けてしまおうと、食器にそのスープを注いですすっていると、弟がぎょっとしたような顔をして、

「それ、さっき酢の物入ってた器?」と僕に聞く。

僕は答えずに、弟のほうを見ながら黙ってスープをすする。

「酢の物が入ってたやつやんな?」

弟は同じ質問を繰り返す。

僕は黙ってスープをすすり続ける。

口の中に広がるコンソメと酢の香り。スープの底にはタコときゅうりが沈んでいる。