ハピネス

ランプの魔人に

「3つ願いごとをかなえてやろう」と言われたとしたら僕は、

 

1つ目に、魔人だったらどういう願いごとをするか聞き、

2つ目に、その魔人の願いごとを叶えてあげ、

3つ目に、3万円貸してもらう。

 

そしてその3万で寿司を食って

新しい靴を買う。

 

月末に来る魔人からの督促のLINEに

手を合わせて謝っている動物のスタンプで返す。

 

文字は一切打たない。

スタンプだけで対応する。

日記

夕方に直撃するはずの台風が南側に逸れ

ずぶ濡れになって帰ろうと思っていたのに小雨がしとしと降っているだけだった。

生乾きの服を着たまま少し寝て、それから犬を散歩に連れていく。

外はもう暗い。雨は完全にやんでいる。

斜めに半円、より、やや大きいくらいの月が薄く見える。

昨日、隣のアパートの垣の根本に捨てられていたプラスチックのタンブラーが今日もそこにそのままある。

「神様のね…」

チャイムが鳴ったから庭に出ると

門の前におばちゃんが二人立っていた。

この時点で大体分かった。

宗教の勧誘だ。

宗教の勧誘は基本的におばちゃん2人のツーマンセルで行われる。

オッサン2人のツーマンセルで行動する刑事とは対を成す存在だ。

 

おばちゃんA「聖書って読んだことあります?」

僕「あんまりないです」

おばちゃんB「原本はないかもだけど、多少は分かりますよね?有名なエピソードとか」

僕「あんまり分かんないです」

おばちゃんA「どういうところが印象に残ってます?」

僕「印象…ヨブ記とかですかね?」

おばちゃんB「あぁ、ヨブ記…」

おばちゃんA「神様のね…」

おばちゃんB「えぇ、神様の教えの…」

 

この人たち聖書読んだことなさそう、って思った。

優しさ

僕は優しい男なので、

頭の中で腹立たしい人間を殴るときでも、女性をグーでは殴らない。

肩を強めに押すくらいで済ませている。

 

男性はグーで殴る。

中指を尖らせてこめかみを殴る。

 

慈悲はない。

それが良い悪いではなく、ただそうだろうなということ

若い男女がひと組歩いている。

歩調が早い。

男はいつものように歩いている。

女は明らかに男に合わせて歩いている。

男は軽快なトークを繰り広げている。

女は相槌を打つものの、話の内容が全く頭に入ってこない。

こいつ歩くの早ぇ~、と思っている。

男はそれに気づかない。

こいつ歩くの早ぇ~、と思われていることに永遠に気づかない。