特に無し

白衣を着た横分けのオッサンが

ひょうたんのような形をした模型を指差しながら

「研究の結果、我々の住む地球は球体ではなく、実はこのようなくびれた形状だったということが分かりました」という発表。

メモに筆を走らせる記者たち。シャッターを切るカメラマンたち。

そのテレビ中継を観ている視聴者たち。

みんな、

どうでもいいなぁ。と思っていた。

白衣のオッサンも、

どうでもいいなぁ。と思っていた。

白衣のオッサンは、

早く帰ってジグソーパズルの続きやりたいなぁ。と思っていた。

懈怠・倦怠・怠けたい

今ふと考えて安心することは妻子のいなかったことで、申し訳なさそうな表情一本槍で嫁だけに仕事をさせて僕は毎日家で寝ているだろうということ。

考えごとをしているふりをしながら何も考えないだろうということ。

善後策のない「仕事辞めていいよ」という空っぽの気遣い。言葉だけの言葉を吐くだろうということ。

にせあまのじゃく

少数派の仲間がたくさんいるところで多数派の批判をするダサさ加減。

その場、そのとき、そのシチュエーションにおいてのマジョリティ側についた結果が世間的にはマイノリティなだけだったりする。

TPOに応じて常に変化していく空気を読んで空気を読まない選択をとり、真の天邪鬼を目指せ。

今日あった「違うのに!」

コーヒーを飲みたいわけでもないのに喫茶店へ行く。

数日前、僕はその店に傘を忘れて帰っていた。

「ここで傘忘れちゃったんですけど」

と入り口で出迎えてくれた店員さんに言うと

「いつぐらいですかね?」

「多分三日前ぐらいだと思うんですけど」

「どんな傘でした?」

「ビニール傘です。透明の。普通のやつです」

「少々お待ち下さい」

店員さんは店の奥に入り、それから透明なビニール傘を5本持ってきた。

「この中にありますか?」

ああこれだな、と思う、はっきりと見覚えのある傘があったので僕はそれを指さして、

「ああ、これです。ありがとうございます」

とお礼を言って受け取った。

受け取って、それからふと店員さんの顔を見ると、

呆れたような、人を小馬鹿にしたような、実に不愉快な苦笑いの表情。

僕は何だこいつ、と思ったのだけど、まぁ用事も済んだので、店員さんに一礼して店を出た。

その帰り道、ぷらぷら自宅まで歩いている途中に、はっと気がついた。

僕の選んだ傘は、他の四本の傘と比べて、あきらかに新しくて綺麗だった。

思い返すと店員さんのあの顔は、

「こいつ、一番良い傘持って帰ろうとしてるやん。絶対自分の傘ちゃうやんそれ」

といった感じの表情だった。

なんてこった!違うのに!

このたまたま他の傘より綺麗なやつが!

僕の!本当に僕の傘なのに!

違うのに!

やさしい世界

才能がなくても努力すれば成功できるやさしい世界はやさしい世界と見せかけて才能がものをいう厳しい世界に変わりはないなぜなら努力できることも才能だから才能もなくひねもすよもすがらゆるゆると流れる時間を感じながらも何をするでもなく漠然と寝て起きるだけの生活を送る人間にも栄光と祝福を。